複数の市民活動同士をつないでいくシビックサークル
今回のプロジェクトの経緯をお話しください
私は、民間施設や公共施設などのコンペやプロポーザルを行うグループに所属しており、今回もプロポーザルで受注したプロジェクトの設計を担当・監理に携わることになりました。
「八潮市役所」では、市民の誰もが一度は訪れる庁舎空間を意識して設計しています。既存の文化ホール、八潮中央公園と連携させ、人が集まり、賑わいを創出することを目指しました。私たちはそれをシビックサークルと呼んでいるのですが、人が行き来する歩道をつくって、その道沿いに市民の活動が広がっていく、八潮市の都市活動の中心となるエリアであり施設です。建物同士ではなく、それらの施設で行われる活動同士をつないでいく、ということを考えました。
設計のポイントを教えてください
市と共有のコンセプトは、「八潮市らしさ」を育てる4つの「わ」です。2階部分に設けたサークル広場を囲むようにキッズスペースや多目的室、食堂などを設置し、賑わいを創出すると同時に隣の公園へとつなげました。どうして2階部分に広場をつくったかというと、庁舎のあるエリアは利根川の水害のリスクのあるエリアに入っています。万が一、水害が起きても庁舎としての事業は継続させないといけない。市民に開きつつも堅牢で安全な庁舎をつくるという、いわば相反する課題に応えるための提案でした。環境にも配慮した結果、ZEB Ready の認証を取得しています。加えて、将来の人口減少を見据えて、あらかじめ建物の一部を図書館などの公共用途に転換できるよう計画しています。
空間に溶け込む、完成度の高い仕上がり
ヒガノ製品を採用いただいた経緯を教えてください
庁舎全体を通して、景観に溶け込むことを意識しました。公園で憩う人々の横にあっても違和感のない建物であることが重要だけれど、市庁舎としての機能は示さないといけない。そこで、アプローチ部分のシェードを考えたときに、薄くすっきりしているというのがよいと感じました。渡り廊下の屋根だけではなく、柱もあわせて統一したデザインでご相談ができたこともよかったと思っています。屋根と柱が一体となってプロダクトデザインとしての完成度が高かったですね。加えて、ほかのメーカーも含め様々な選択肢はある中で、ヒガノさんはこちらの設計に合わせて調整をしてもらえました。施工性がよいというのは現場としてはとても助かります。
美しさと安全性、環境へ配慮したデザインへ
今後、ヒガノにどのような期待をされますか
設計者としては、構造も含めて提案をしてもらえるというのは頼りになります。外構というのは敷地や建物との関係でサイズが限定されることが多いため、細かく調整をしてもらいました。さらに期待をするならば、工法や素材の制約はあるのでしょうが、耐火性能の高い製品があるといいなとは思います。不燃認定の取れる製品があれば、建物本体側への利用も広がっていきますよね。外構は最初に目に入る部分であると同時に、環境的には風雨にさらされる箇所でもあります。さらに、建物が完成したときの状態をどこまで保っていけるか、というのは設計者としては気になるところです。安全面とともに、耐候性の強度も期待します。