「辻」のような空間にさりげなく佇む、シンプルな「門扉」
「立正大学品川キャンパス150周年記念館」を受注した経緯を教えてください。
渡邉様:2016年に指名型のプロポーザルがあり、大学建築などの実績がある事務所がピックアップされ、そのうちの1つに弊社が選ばれました。私たちはまずマスタープランを丹念に読み解きながらキャンパス全体を調査し、対象とされた150周年記念館単体の計画にとどまらない、大学全体の長期的な将来像を提案しました。大きな視点を持って将来を見据えた姿勢も評価していただけたのかもしれません。
当社にご依頼いただいたきっかけ、採用の決め手を教えてください。
渡邉様:古くから日本では人々が往来する道が交流の場として機能してきたといわれています。道と道が交わる「辻」が今回の建築設計の大事なコンセプトの一つになっています。山手通りからキャンパスの地上レベル、さらに屋上までを「辻」のような空間で立体的に数珠つなぎに結んでいきました。そのメインアプローチとしてつくられた「大階段広場」は、大学と街をつなぐ大事な役割を持った場所です。そのため、どんな「門扉」がふさわしいのか…非常に悩みました。そこで鹿島建設株式会社の竹本さんにご相談したところ、ヒガノさんの製品をご紹介いただいたわけです。キャンパスの入口に物理的に門扉が存在するとどうしてもそこが境界線として強く意識されてしまいます。シンプルなヒガノさんの製品のなかでも、さらにさりげない佇まいの「マルチスライド式引戸」を選びました。さらに門扉の収納スペースを建物のコアに取り込み、大学の運用時間中はどこにあるのか分からないディテールとしています。
竣工後の感想を教えてください。
渡邉様:学生たちが集うようになった今、座って学生同士で議論をしたり、奥のほうでギターを弾いている学生がいたり、大学の活動の様子が街に対して開かれるようになったと感じています。これからの大学と街との関係性を考える上でますますこうした誰にとっての居場所となり、多様な活動の受け皿となるコモンスペースの存在が重要になっていくのではないでしょうか。その役目をわかってもらえたと同時に評価いただけていると感じています。
設計者のニーズに応える機能性とデザイン性を備えるメーカー製品
当社の製品を渡邉様にご推薦いただいた理由を教えていただけますか?
竹本様:渡邉さんからのご相談は学校のエントランスに求められる機能とデザインを兼ね備えた「門扉」でした。大学の「門扉」というのは開いている時が正装ですよね。そのため妙に目立つようなファッション性の高いものではなく、できるだけ黒子に徹したものがほしい。それに乗り越えられない機能面、そしてコストの面も求められているということでした。これらのニーズを考えると、実現できるのはヒガノさんしかいないだろうと思い推薦しました。
当社とのやりとりなど印象に残っているものがあれば教えてください。
竹本様:長年、さまざまな案件を依頼させていただきましたが、私にとってヒガノさんは、難しい要望にもしっかり応えてくれる会社というイメージです。今回でいうと、エントランスの実施設計が終わりぐらいの段階で、まだきちんとした図面がない中「この高さと幅で、この商品にしたい」といったざっくりとした形でヒガノさんに相談しました。すると、営業担当の方がすぐに問題点と改善策を提示してくれました。他社だと持ち帰って現場と相談するためやりとりに時間がかかったり、コンセプトから外れた改善策が提示されたりすることがあるのですが、ヒガノさんはタイムリーで的を射た提案をいただけるのでとても信頼しています。
真のニーズを汲み取る力を活かした新分野への進出に期待
設計者目線でのエクステリアの重要性を教えてください。
竹本様:ランドスケープに関わるのがエクステリアであって、建築を際立たせる、もしくは建物をサポートする。そういうものが一番大事だと思っています。そのエクステリアに無粋なものを持ち出してしまうのはダメ。世界観が損なわれてしまいます。だからこそ、私はエクステリアは周囲の景観に調和することが大事だと思っています。さりげなくあること。そして一番お金をかけるべきところであると考えています。
今後、当社または製品に期待したいことはありますか?
竹本様:ヒガノさんは言われたものをただつくるのではなく、お客様の要望のなかにある社会や風景、また延長線上にある本当のニーズを掴んでデザインしてくれる会社だということを今回改めて感じました。それでいて機能やコストでも納得のいくものを提案してくれる会社はそうありません。とてもありがたい存在です。
ヒガノさんが現在手がけているもの以外の新しい分野にも進出してもらえたらうれしいですね。たとえば「手すり」とか。先を読む力に優れているので、新しい分野へ進出できる実力のある会社だと思ってこれからも期待しています。