「質実温雅」を表現した女子校ならではの「門扉」
本プロジェクトに携わるきっかけを教えてください。
谷口様:“自然との共生”をテーマに設計・監理した「淑徳与野中学校」が2009年に彩の国景鑑賞を受賞しました。それらの実績を評価いただき、また移転新設することになった「淑徳与野高等学校」を手がけることに。エコ&スマートスクールをコンセプトに掲げた女子中高一貫のキャンパスは、近隣環境を整えながら20年ほどの時間をかけて推進してきたプロジェクト。その設計もさいたま新都心駅側の学校の顔ともいえる校門を残すのみ、という段階まで来ていました。
「慈心門」はどのようなコンセプトで設計されましたか?
川谷様:私が本プロジェクトに着任した時には、すでにキャンパス計画の最終段階に入ったところで、プロジェクトの締め括りである「慈心門」の設計を担当することになりました。「淑徳与野中学・高等学校」を展開する学校法人大乗淑徳学園は、仏教系の教育機関です。校門はそれらを感じさせながら、女子校ならではの「繊細さ」と「質実温雅」を感じられる門をコンセプトにつくることになりました。
ボリュームのある象徴的な門構えは繊細な小さいパーツが積み上がってできているんです。住宅でも利用されるような小断面のヒノキ製材を組み合わせることで屋根・壁を構成しています。架構を支える鉄骨の柱も木のモジュールに合わせ、繊細さを重視したサイズと構成で計画しました。門塀の部分も細かな粒が重なり構成される版築になっており、ヒガノさんに製作してもらった「門扉」部分は、三角のモチーフが連なって面が現れるようなデザインを目指しています。
当社の「門扉」を採用いただいた決め手を教えてください。
川谷様:製作当初は数社に相談したのですが、ヒガノさんの対応は他社さんと全く違っていました。特注対応にも「決してできないとは言わず、こうすれば実現できる」という、つくり手目線で前向きに話をしてもらえたことが決め手でした。
設計者の思い描いたデザインと耐久性を叶えるヒガノ
製作中に印象に残ったエピソードはありますか?
川谷様:当初いろいろスケッチを描いたのですが、ヒガノさんの営業担当の方に見てもらったことで、思い描いているデザイン性を担保しながら経年に耐えうるものにできるかという、技術的な部分も詰めることができました。現在の柔らかい三角のモチーフにしたものも、ヒガノさんと精査していくうえでたどり着いたもの。やり過ぎてしまうと野暮ったくなってしまうので、さらっとディティールを魅せられる絶妙なバランスを一緒に探り、丁寧に対応してもらった印象です。
谷口様:実は川谷のような立場だと、「門扉」の設計に時間をかける機会というのはなかなかないんですよ。どんどん仕事を回していかなければならないので。
川谷様:そうですね。今回の製作は想像している以上のものとなったので、自分の作品としても誇らしい仕上がりになりました。私にとってすごく楽しい、そして貴重な体験になりましたね。
施主様から「門扉」に対しての感想があれば教えてください。
谷口様:校舎のデザインが志望校を選ぶ決め手の一つになることもあるようです。受験者数が年々増加傾向だとお聞きしているので、そういった意味でも貢献できたのではないかと思っています。
一緒につくる”スタンスを崩さずデザイン性の追求に期待
「エクステリア」の重要性とは?
谷口様:まだ“エコスクール”という概念がなかった20年前と比べると、今は環境要素が強く求められるようになっていると思いますね。教育施設の場合、学生の過ごす場所を室内だけではなく外に開くという意識が出てきていると思います。例えば建物をウッドデッキにして外と連続させるなど。そういう意識はどんどん高くなってきていると思います。
当社に期待することがあれば教えてください。
谷口様:組織的な設計事務所だと全部自分で考える時間がなかったりするので、どれだけ一緒になって考えてくれるのかということが重要だったりします。設計者が「今」欲しいデザインを今後もしっかりとつくり続けてもらいたいですね。
川谷様:私のヒガノさんのイメージは“一緒につくってくれる人”というイメージがあるので、そのスタンスは崩して欲しくないなという思いはあります。期待することとして、設計者は新しい情報・価値をつねに探っていく職業なので、ヒガノさんが何か新しい取組みを始めた時や新しい製品が登場した時などは情報発信や共有に力を入れてもらえると嬉しいですね。