創業地小石川に情報加工産業としての集積の場である新本社を建設
今回のプロジェクトの経緯をお話しください。
私の所属している設計本部 プロジェクト設計部2部は、業務施設や商業施設といった複合用途ビル、特に大規模プロジェクトを手掛けることが特徴です。共同印刷株式会社様は、当社とは100年以上のお付き合いをいただいており、今回の本社建設については10年ほど前にお話をいただきました。
共同印刷様は近年の多角的な事業拡張により、いわゆる出版印刷だけではなく様々な事業を展開しており、地方も含めた様々な場所に生産拠点の移転計画とその締めくくりとなる今回の重要なプロジェクトについてご相談いただきました。建物の計画、設計に留まらず、小石川の新しいシンボルにふさわしい周辺地域との親和性、さらには敷地内の既存建物の解体、補強、改修工事を含む総合的なプロジェクトとなりました。
設計コンセプトはどのようなものだったのでしょうか。
「共同印刷株式会社 本社」が建つ小石川交差点は、都心でありながらオフィス街とはひと味異なる場所です。明治期に日本初の本格的な教育機関が置かれた本郷を中心に、文化の最前線としての歴史を現在も維持しています。そのような場所で、創業100年以上続く企業文化を引き継ぎ、永く使い続けることができるロングライフな建築を目指しました。
都心の再開発にあるような高層化を敢えて避け、免震構造を採用し、耐震壁を分散させた剛性の高い分散シャフトと外周部の小断面アウトフレームにより、高い免震効果の発揮と空間の最大化を目論みました。小石川植物園をはじめとする豊かな緑をさらに増強し、文化を担う印刷会社に相応しい環境創造も行いました。新たな執務室は、様々な部署が分け隔てなく、等しく自然採光と眺望を享受できる大平面+4面採光とし、より精緻な湿度制御が可能な、印刷業にフィットする放射空調※1とデシカント床吹出空調※2を採用しました。
※1…天井・床・壁などを冷却・加熱し、空気を介さない放射による熱交換、および室内の空気と冷却・加熱との自然対流による熱交換を行うシステム
※2…空気内の水分を除去・分解して適切な温度や湿度に調整して室内へ給気し、空調された空気が二重床構造の床内部を経由して床面から吹き出すシステム
訪れる人が最初に目にする重要性を実感
ヒガノの「ゲート(大型門扉)」採用の決め手を教えてください。
今回、ヒガノさんには歩道との境界に設置する3箇所の「ゲート(大型門扉)」をお願いしました。外構はどうしても検討が後回しになってしまい、予算も限られてしまいます。しかし、エクステリアは、建物と切り離されていつつも訪れる人が最初に目にする重要度の高い場所でもあります。その場所が、設計者のコントロールが行き届かないまま進んでしまうことはどうしても避けたいという思いがずっとありました。
スチールやステンレスといった重みを感じることのできる素材で、かつメーカー製品からプロジェクトに合わせて少しでもアレンジできないかと考えていたところ、ヒガノさんのウェブサイトを見つけてすぐに連絡しました。
施主様からの反応や評判はいかがでしょうか。
今回建物がリニューアルしたことで、社員の方の表情が明るくなったと聞いています。事業再編もあり、オフィスへの考え方も1から整理して作り上げたので、組織にフィットした空間や異分野が集う空間として生まれ変わり、社員の皆さんのモチベーションアップにも繋がったのではないかと感じています。
ヒガノさんの門扉に関しては、「ステンレス製でありながら、引き込んだ際の重さを感じさせず、操作性が大変高い」という高評価をいただいています。正面ゲートとその横のサブゲートに加え、駐車場側ゲートもヒガノさんの製品でそろえることができました。
アレンジできる余地を残す技術力の高さ
当社の仕事の進め方で印象に残っていることがあれば教えてください。
「ゲート(大型門扉)」に対する経験の豊さにはとても助けられましたね。引込方法ごとのバリエーションが豊富で、設計者の提案をほとんどカバーしてもらえたと感じました。時間の制約がある中でいくつもの参考図を作成いただき、変更にも迅速に対応いただいたと思います。同じチームとして、前向きに力強く伴走いただいたという印象です。
今後、ヒガノにどのような期待をされますか。
ヒガノさんは機能的に積み重ねたコアの技術をしっかりと持っていながら、そのうえでアレンジできる範囲もきちんと残されている。既製品をただ当てはめるというのは上手くフィットしないことが多く、ではどうすればできるのかを一緒に検討いただける安心感と信頼感を強く感じています。今回のインタビューのようにウェブサイトで事例を紹介されていて、他の施工事例や設計者のコメントも大変参考になりますし、とてもありがたいですね。